麻布十番で働くCEOのBlog(旧・南麻布で働く社長のblog)

成功報酬型求人メディアGreenの運営や、インターネットサービスの企画・開発を行う株式会社アトラエの社長のblogです。

2018年03月

経営者としての成功とは何か。

最近は資金調達を実行するだけでたくさんの人から「おめでとう!」というコメントがSNSで投稿されているのをよく目にする。
また昨今は成長途上の会社を売却するケースが日本でも少しずつながら増えてきている。
プライベートカンパニーとして黒字で運営している会社もあれば、少人数でいきいきと働いている会社もある。

では経営者として何が成功なのだろうか。


ここからの内容はあくまでも私自身が2000年から経営者としてビジネスを営み、2003年から起業して今に至るまでの試行錯誤の道のりの中で考え抜いた末にたどりついた一つの考え方にすぎないことを事前に伝えておきたい。

私自身の考えとしては、本質的に会社という仕組みは関わる人々(ステークホルダー)が幸せになるために作り出された仕組みだと考えている。広義で捉えれば資本主義自体も人々が幸せになるために、現時点でもっとも適していると考えられている仕組みなのではないだろうか。

会社単位に話を戻そう。

会社単位で考えた時にステークホルダーとして考えられるのは、主として社員・顧客・株主であり、広く捉えればその家族や社会ということになるのだろう。

経営者の仕事とは、最低でもそのステークホルダー3者に対して価値貢献をすること、言い換えればその3者を幸せにすることに他ならないのではないかと思う。

もちろん坂本龍馬のように国の未来のように、もっと大きく価値ある目的のために人を巻き込み実行するというリーダーもいるのは理解している。しかしながらそんなレベルの話をしていても、私のような至極庶民レベルの経営者からすれば正直雲の上の話である。あくまでも一般的なレベルにおける成功の定義を考えると、この3つのステークホルダー、もしくはその家族や社会といったところまでの幸せを考えるのが現実的ではないだろうか。

その上で、顧客に対する価値貢献は売上もしくは売上粗利という指標で、株主に対する価値貢献は時価総額もしくは株価という指標で、そして社員に対する価値貢献はエンゲージメントという指標で測ることができる。

私が考える経営者の仕事というのは、その3つの指標をしっかりとバランスを保ちながら向上させていくことだと考えている。

なので経営者としての成功は、少なくともその3者に対する価値提供が実現できたときであり、更に言えば世の中の一般的な水準と異なるレベルでその価値提供のバランスを実現できた時が、経営者としての成功なのではないかと思っている。


その論理でいえば、会社売却というのは株主という1ステークホルダーという視点だけで言えば価値提供になっているケースが多い一方で、社員や顧客という視点でいえば特段の価値提供にはならないケースも多い。そういう意味ではいわゆる経営者としての成功ではなく、オーナー株主としての成功だと捉えるのが正しい気がする。

100%オーナー社長でプライベートカンパニーでしっかりと売上・利益を出している会社は、株主=自分なのでそこは気にする必要がない。そういう意味では社員がエンゲージメント高くイキイキと働いていて、売上・利益が出せているようなら、経営者としては成功といっても差し支えないように思う。

売上や利益、はたまた株価が伸び続けていながらも、社員のエンゲージメントが極めて低い会社というのも、あくまでも人を使ってうまく収益を出す力が高いという事実はありながらも、私が考える経営者の仕事という意味では足りてないように感じる。


こういった私なりの勝手な概念でいえば、資金調達や会社売却を経営者としての成功と捉えることには多少なり違和感が芽生える。
あくまでも主たる3者のステークホルダー、もしくはその家族や社会といったそれ以上のステークホルダーに対する価値提供の実現こそが経営者の仕事であり、そのレベルやクオリティをどこまで高められるかこそが、経営者としての成功の定義ではないだろうか。もちろんそのレベルは人それぞれの考えや目線があろうとは思うが。


ちなみに、弊社アトラエでは私CEOの報酬は以下のような明確なロジックで算出される仕組みを導入している。

CEO報酬
 =【高額給与社員トップ5%の平均月額給与】×【係数】×【KPI1】×【KPI2】×【KPI3】

KPI1・・・前年対比売上成長率によって自動的に算出される0.9〜1.2までの係数
KPI2・・・前年対比時価総額成長率によって自動的に算出される0.9〜1.2までの係数
KPI3・・・期末の全社員のエンゲージメントスコアによって自動的に算出される0.9〜1.2までの係数

これが正しい評価システムなのかはわからないが(そもそも正しい評価なぞ存在するのか?!)、私なりに考える経営者の価値貢献に基づいたロジックにはできたと思っている。


誤解なきよう最後に付け加えさせてもらうと、資金調達がしやすくなったことや起業そのものがしやすくなったことは日本にとって非常にポジティブなことであり、またIPOだけではなく売却という選択肢もできたことも極めてポジティブだと捉えている。

一方で経営とは何か、経営者の成功とは何か、という点においてはもう少し深く考察することが大事なのではないかと考えている、ということからこんなエントリーをしてみた次第である。私自身もまだまだ道半ばであり、成功にはほど遠いレベルだということは十分に認識している。


高度経済成長が終焉してからすでに30年近くが経過するが、その間の日本という会社の経営や決して成功ではなかった。特に働く人々のエンゲージメントという意味では現在は過去最低レベルだと思われる。

働き方改革では日本で働く人々のエンゲージメント向上こそが最優先であろう。

昨晩の会食でこんな話を教えていただいた。

人は現在自分がいる地点の絶対値が高いか低いかによって幸せを感じるのではなく、現在いる地点が上り坂の途中だと感じているのか、下り坂の途中だと感じているのかによってのみ、幸せか不幸かを感じる生き物らしい、と。


改めて経営者としてより関わる人々の幸せを追求し続けることと、関わる人々を増やしていくことに邁進しつつ、究極的には人のためではなくそれこそが自分自身の達成感ややりがい、そして幸せにつながるのだと思う今日この頃である。

久しぶりに連続してブログを更新。

2019年卒業の新卒採用活動も終盤にさしかかってくる中で、学生から実力主義について、少し物々しい印象や不安を覚えるという話が出たということで、少しアトラエでいうところの実力主義の本質について考えてみた。

実力主義というと成果至上主義で、実現した売上や成果が評価の全てになるといった、なんというかだいぶギスギスした組織風土をイメージする人が多いのかもしれない。

そういう意味でいえば、弊社の組織は実力主義という言葉とは似て非なるものかもしれない。

どちらかといえば「成果」よりも「貢献」に焦点をあてて評価をしている。
年功でも成果でもなく、あくまでも「貢献」の度合いに応じて給与が変動していくのが望ましいと思っている。
貢献というのは営業メンバーによる売上というわかりやすい貢献もあれば、管理メンバーが少人数で(ローコストで)迅速かつ正確に決算を締めるのも大きな貢献だし、エンジニアメンバーの努力によって画面表示速度が早くなり、それによってユーザー体験が向上するのも大きな貢献である。

どの貢献がどれだけ価値があるかという意味では、比較するのは極めて難しい。

そこで弊社では、業務遂行力という軸と、チームビルディング力という軸の2軸で評価マップを作成し、その人がどのレベルで力を発揮してくれているか(貢献しているか)を360度で評価しあうといったシステムを導入している。つまりその2軸の要素こそが弊社において貢献する上で重要だという認識である。

具体的には被評価者が5人の評価者を指名することからスタートする特殊な評価システムである。

端的にいえば、管理者が「こいつは貢献している」という評価よりも、仲間から「彼は貢献している」と思われている人を評価するようにしていくことがアトラエらしいという判断に基づいている。その結果として、社員全員が評価者になる可能性を持っており(実際にほとんどの人が経験している)、そして先輩も後輩も(上司は居ないので)仕事仲間全員が自分の評価者になりうるわけで、そう思うと日々の仕事の仕方や関わり方においても、一定の気配りや一方的な態度はしなくなるという副次効果もある。

余談だが、ちなみにCEO(私)の報酬や役員の報酬についても、高評価社員5%の平均給与に係数と変数を掛け合わせて自動的に決まる仕組みを導入している。変数要素は、売上前年対比成長率株価前年対比成長率全社員エンゲージメントスコアの絶対値である。

このあたりの評価システムについてはまたそのうち詳しくブログに載せようと思う。

何より大事なのは、自分達の組織においてもっとも貢献してくれた人にもっとも多くの給与を払うという考え方について、全社員が共感し運用できていることが一番大きい。

ちょっと脱線したが、厳しい採用基準を設けているためか、アトラエのことを徹底した実力主義と思われている人も多いかもしれないが、それは少し実態とは異なるので、徹底した貢献主義、いわゆるPay For Performanceではなく、Pay For Contributionという概念で組織を運営しているということを知ってもらいたく、急遽ブログを更新してみた次第。

ちなみに手前味噌ですが、まじで働きやすい会社ですよw

最近ブログの更新が滞っているとのご指摘を各方面からいただくのですが、最近は何か書きたいことがあるときにだけ更新していくスタイルに変更しようと画策中ですのでご容赦いただければ。。。

最近になって、急速に弊社事業はもとより、弊社の取り組み独自の組織運営手法に関する取材や問い合わせが増えてきている。

そしてその度に聞かれることがある。

「御社はティール組織なのですか?それともグリーン組織?もしくはホラクラシー組織というのが一番近いのでしょうか?」



この質問をいただく度に少し戸惑う。なぜなら私自身がホラクラシー組織やティール組織について研究し、それを実践しているわけではないから。今のアトラエの組織運営方法というのは、あくまでもアトラエで働く人達が生き生きと働き、充実した人生を送り、関わる多くの人達を少しでも幸せにできることを目指し、そのためにどうすべきか、どうあるべきかを試行錯誤してきた結果でしかない。


最近翻訳されたティール組織もすごい流行っているらしいし、私も斜め読み程度に目を通したが(めちゃくちゃ分厚いのでちゃんと読むには覚悟が足りず・・・)、組織運営に携わる立場の人にとっては多くの学びがあるのは事実だと思う。そして従来のヒエラルキー型組織とは異なるメリットを享受できる新しい組織形態が生まれ始めているのも事実だろう。

一方で組織形態はあくまでも手法でしかなく、組織だけをフラットにしたり、ティール組織を真似して実践するだけで会社がうまくいくなんてことはありえない。

大事なのは経営者を含めたリーダーがどんな会社・組織にしていきたいかという経営理念であり、ティールやホラクラシーはあくまでもそれを突き詰めて実践しているいくつかの会社で見られる傾向を分析して、わかりやすく整理してくれているにすぎない。

最近自分達の組織もやっぱりホラクラシーにすべきでしょうか、といった相談を受けることも多いが、上記した通り、ホラクラシーにするかどうかは大事ではない。大事なのは、社員のエンゲージメントを高めることに他ならない。これからの知識産業社会において、組織としての競争優位を維持していくためには、社員一人一人の能力や知恵を最大限活かすことがもっとも重要なファクターとなる。そしてそのためにもっとも大事な経営上のKPI(Key Performance Indicator)は社員のエンゲージメントである。

ぶっちゃけ、ヒエラルキー型の組織だろうが、フラットな組織だろうが、働く人達のエンゲージメントを高められているのであれば問題はない。集めている社員の性質や組織としての目標、業態などによっても最適な組織形態は異なってしかりである。大事なのはそこで働く人達が自主的貢献意欲を持っているか、つまり高いエンゲージメントを有しているか、でしかない。

ということで、組織理論においてはフラットかヒエラルキーかが大事なのではなく、働く人達を最大限活かせているかどうか、が大事なのであろう。

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