昨晩、とある経営者の集まる勉強会で、日頃から私が考え社内でも実践してきた組織運営理論と同じ意見を耳にして嬉しくなった。
しかも講演者は私とは比べ物にならない大物経営者であればこそ余計である。

その組織運営理論というのは、情報格差によるマネジメントに価値はないというもの。
20年近くの間、経営リーダーとして組織を率いてきた中で培ってきた私なりの持論でもある。

現代においてはインターネットや技術の進化によって、コミュニケーションコストや情報共有コストは極限まで小さくなってきている。世界どこにいようとインターネットにさえ繋がれば、簡単にコミュニケーションがとれ、情報共有ができる時代に突入した。

まだそれが実現できなかった時代においては、現実的に多くの人が情報を共有することが難しかったため、情報は上層部からの伝言ゲームに近い伝達手段を用いて共有されていた。それによってマネジメントをする人はメンバーよりも多くの情報を有し、メンバーは情報が不足しているが故に、マネジメントレイヤーの人にお伺いを立てない限り意思決定することができなかった。当然情報がなければ正しい意思決定はでき得ない。

一方で現代においても、旧態依然としたマネジメント手法、すなわち情報格差を利用することによって、イニシアティブを取ろうとするタイプのマネージャーも数多く存在するのではないだろうか。これは無意味に上下関係意識を強めるだけで、パフォーマンス向上には一切繋がらないと私は思っている。

情報通信技術、すなわちITの進化により知識産業社会へと急激に移り変わり、競争環境や競争優位性の概念が激変した。現代における唯一無二の競争力は創造性革新性といった「知」である。

そのを十分に発揮するためには、最大限社員が情報を持ち、自ら考え判断することを促していくことが望ましい。

もっと端的に言うならば、旧来のマネジメントとは、戦略を立てミスがないように実行を管理監督することだったのに対して、現代のマネジメントは、社員の意欲や当事者意識を高め、心理的安全性を担保すべく環境を整えサポートすることによって創造性と革新性を発揮してもらうことという感じだろうか。

そのためにも情報格差は最大限排除すべきであり、それを意図して行なっているマネージャーはもはやパフォーマンスを高めるどころか、情報共有を阻害し、派閥を作ることで、組織をマイナス方向へと導いていく存在になりかねない。

つまるところ、コミュニケーションは全てオープンな場所で行われるべきだということ。

メール時代にはなかなか難しかったが、社内でチャットを使っている会社が増えている今では、ダイレクトチャットはよほどのことがない限り使わないというルールを徹底するだけでいいし、会議の内容なども議事録をオープンな場に保管しておけば良い。情報をコントロールしたがる人ほどダイレクトチャットを多用する傾向があるので、データを取得しておけば誰がどういう習性を持っているかさえも把握できるだろう。

もちろんデメリットとして膨大な情報に埋もれてしまう社員が発生するリスクもある。しかし一流企業を目指すのであれば、それさえもプロフェッショナルとしてコントロールしてしかりだと考えれば、やはり情報は徹底的に共有することが重要だと考える。

情報は自身のパフォーマンスや貢献を高める上で必要なときに必要なものを自由に取れることが、これからの組織運営の基本になるのではないだろうか。