麻布十番で働くCEOのBlog(旧・南麻布で働く社長のblog)

成功報酬型求人メディアGreenの運営や、インターネットサービスの企画・開発を行う株式会社アトラエの社長のblogです。

2018年10月

44年の人生において、この度初めて本を出版することになりました。

11月7日発売予定で、現在はAmazonで先行予約を開始しています。

組織の未来はエンゲージメントで決まる

ブログを10年以上に渡り更新してきたこともあってか、ありがたいことに、これまでにも多くの出版社の方から出版のご依頼、ご提案を頂いてきました。

しかしながら、たかだか小規模なベンチャー企業を経営してきただけの自分が、本を通して他人に何かを伝えるなんておこがましいという思いから、引退するまでは本は出すつもりはないと言い張ってここまできました。そんな私が急遽執筆することになった背景には、強い問題意識と恵まれたパートナーの存在があります。

まず強い問題意識というのは、日本全体が抱える「働く意欲が低い」という問題です。
日本は先進国の中でもトップレベルに労働意欲が低い状態がここ数十年続いています。
政府肝いりでスタートした働き方改革もまだ時間がかかりそうなのと、少し違った方向を向いてしまっている印象も拭えません。
このままでは、IT産業で圧倒的な強さを誇る米国と、モノづくり大国として世界No1となりつつある中国の板挟みの中で、ずるずると落ち込んでいくのは目に見えています。

一方で日本人というのはチームで何かを成すことに長けた国民でもあると思っています。
スポーツチームをみていても、個人戦以上に団体戦において高いパフォーマンスを発揮する人達をたくさんみてきました。まさにOne for all, all for one の基本理念を持っているのではないでしょうか。

そんな日本の内なる強さを今一度発揮するためにも、日本全体におけるエンゲージメントを高めていく必要があると考えています。エンゲージメントとは、日本語でいうところの自主的貢献意欲というニュアンスでしょうか。

これからの変化の激しい知識産業社会においては、オペレーショナルエクセレンス以上に、創造性や革新性の発揮こそが重要になってきます。ビジネスの競争原理が変わってきている以上、組織のあり方にもイノベーションが求められるのは当然です。

言うは易し、行うは難し。当然その通りで、ただこう言っているだけでは評論家と変わらない。そう思い、昨年wevoxというエンゲージメント測定ツールを開発し、多くの企業にご好評頂いています。その文脈において、さらに本を出版することで、少しでも日本の働く人達が元気になってくれれば、日本の組織が活性化し、再び日本が元気になればと思い、決断した次第です。



また共同著者である松林さんは、グロービス経営大学院で講師を勤めながらも、組織論や社員の幸福論において極めて強い関心と問題意識を持つ方であり、そんな松林さんに後押しいただけたことも極めて大きかったです。

最後に英治出版の高野さんが出版のプロフェッショナルとして、単なる売上を目的とすることなく、本質的に社会にとって必要な本だから出版したいといったご提案をいただき、ここでようやく重たい腰が動きましたw

初めて書いた本でもあり、少し不慣れな面がありながらも、上記お二人のご協力があって、なんとか出版まで無事にこぎつけました。この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。

会社とは関わる人の幸せのために存在する、これが私の経営哲学です。
まさに社員が幸せになれる会社作りのヒントを盛り込ませていただきました。
この本を通して、少しでも多くの人々がいきいきと働ける世の中になれば、心から嬉しく思います。

最近、いろいろな取材・インタビューや経営者の方々から、フラットな組織を作る上で大事な要素について質問いただくことが増えてきたので、一度ブログで整理してみようかなと思います。

タイトルが英語なのは、なんとなく日本語のタイトルにしたらダサかったので、英語にしてみただけで特に大きな意味はありませんw


まず最初によく誤解されがちな点として、組織はフラットにすべきだと主張したいわけでも、そう思っているわけでも一切ありません。私が組織づくりで大切にすべきだと思っているのは、働く人たちが無駄なストレスなく、いきいきとやりがいを持って、正しいと思うことに邁進できる組織であることだと思ってます。その一つの実現方法がホラクラシー型組織と呼ばれるフラットな組織形態だというだけです。

その上でフラットな組織、またはそれに準ずる組織を作っていく上で鍵となるポイントは、以下の3つだと思います。



・カルチャーや価値観の浸透
・徹底した情報共有の実施
・人事考課・評価システムの構築


まずどれだけ見た目や組織図をフラットに近づけたところで、社員の意識の中に上司・部下という概念が残っていたり、出世や派閥などの概念が残ってしまっていると、基本的にはなんら意味をなさないので、そこを徹底して改革することが第一歩だと思います。

若い社員が大先輩社員に対して、一切気負うことなく反対意見を言えるカルチャー作りを徹底しないと成り立ちません。そして全ての意見はその組織や事業、つまり会社を良くするため、ビジョンを実現するためであるべきで、そこに私心が入ってしまうのも絶対にNGです。そういった行動指針やバリューと言われるようなものをしっかりと浸透させない限り、一切ワークしないと思います。


それができた上で、次に大事なのは徹底した情報共有です。
大事なのは「徹底した」というところ。
どれだけ意欲があり視点が高くても、正しい情報がなければ正しい判断はできません。
社員に能動的かつ自発的な貢献活動を求める以上は、自分が持っている情報と同等レベルで情報を共有することが必要です。正確には必要に応じて誰もが情報を手に入れられる仕組み(システム)を整えることと、あらゆるコミュニケーションをオープンな場でするというルールの徹底をしないといけません。

弊社で唯一完全オープンでないのは給与に関する情報のみです。
給与に関する情報は、評価が低い人たちにとって、開示されることが一種のさらし首のようなネガティブな感情につながるリスクが高いと思ってます。やはり誰かが悲しい思いをしたり、働きづらくなったりするリスクがあるケースにおいては、情報開示はすべきでないと考えています。

ただしそれ以外についてはほとんど全てが共有されているので、自社株の売買については、全社員が社長や役員と同じレベルでインサイダー規制対象となっています。それでも徹底して情報を共有することを選択しています。


最後に人事評価や給与について。
ここが一番悩ましいところだと思います。
一律給与や完全年功制など、いろいろいとゼロベースで考えましたが、どれも今ひとつピンとこず。
やはりフラットである以上は評価者と被評価者が完全に別れるような仕組みは合わないと考え、基本的には360度での評価をベースとしています。
その上で、Pay for contributionという概念を軸としており、成果というよりも貢献ということに重きをおいた設計をしています。その人がどの程度貢献したのか、ということを360度で仲間から評価されることによって、給与原資の分配比率が決まるようにしています。貢献という曖昧な要素をどう因数分解し、なにを持って貢献というのか、というところが一番難しく、現時点でも鋭意改善中です。

ぶっちゃけイメージとしては、アトラエにとって代替難易度が高い人=貢献度の高い人、といえるのではないか、などの議論を、社員中心のワーキンググループで繰り返し行い、システムをブラッシュアップしていってる最中です。

フラットな組織で大事なのは、誰にも利権を持たせないということだと思っています。



上記3つの要素を満たす努力をしつつ、積極的にセクションや上下を超えたコミュニケーションを増やすことで、組織はより風通しよくなっていき、社員の心理的安全性が担保されやすくなり、結果として生産性が高まり、離職率も一定程度までは下がっていくはずです。

大事なのは会社というのは箱の名称ではなく、自分達の属するチームのことを指しているだけであり、まさに自分がその会社を構成する一人なのだという当事者意識やオーナーシップを持ってもらえるようにすることです。それができればあとは性善説で運営していけば、いろいろなことがうまくいく、そう思います。


失われた30年と言われるように、今までの日本の働き方や組織のあり方が明らかに制度疲労を起こしているのは明白です。事業モデルだけでなく、組織モデルもより自律分散協調型へと移行していくのが、極めて自然な流れであり、不可逆な流れだと思っています。

働き方改革も少し方向性がずれている気がしないでもないですが(笑)、そういった課題意識の現れなのだと前向きに捉え、本気で日本全体を変えていくことが大事だと思っています。


日本経済全体が、再び生き生きと活気あふれることを祈りつつ。

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