本日の日経新聞の一面の見出し記事にもなっている給与所得控除の見直し案について、ちょっと考えてみた。


少し話しは飛ぶが、会社の経営とは、ヴィジョンを掲げ、戦略を立案し、それに基づいて人材を適材適所に配置し、組織をモチベートし、限られた資金リソースを有効に活用し、利益を生み出し、成長していくもの。

一国の首相が国を運営するという点でもかなりの共通点があると思う。
財源はまさに会社でいう資金力の部分。借入や第三者割当増資など、様々な選択肢はあるが、ある一定制限のある資金をどう活用し、どこに投資するのか、それはまさに財務戦略、投資戦略であろう。

そしてその判断のベースとなるのが国家戦略であり、日本が今後10年、20年を見据えたときにどうやって成長していくのか、どういう国になっていくのか、というビジョン、戦略に基づいて、限られた財源を必要なところに投資していくことが、首相の仕事だろう。

また所得税や控除、手当などの税制についても、会社で言うならば賃金制度や評価制度に近しいものとして見れるのではないだろうか。

他社(他国)と比較してどういう特徴を持たせるのか。

実力主義にするのか年功序列にするのか、賃金差を良しとするのか、できるだけ賃金差が出ないようにするのか、などなど。

賃金制度は経営者から社員へのメッセージとなる。
実力主義で賃金差がある制度を導入すれば、若くて自信がある人はモチベーションが上がるだろう。一方で年齢が高い成長期を超えた人にとっては厳しく感じられるかもしれない。
年功序列で賃金差がある制度を導入すれば、若くて自信のある人は辞めていき、年齢の高い人のモチベーションがあがるだろう。

では今回の給与所得控除の税制案は、国民にどういうメッセージを投げかけることになるのだろうか。

基本軸としては、高所得者への負担が今まで以上に重くなり、より格差をなくそうという目論見のようである。

政府はそれで本当に日本が復活できると思っているのだろうか。

極端な言い方をすれば、日本の経済を牽引していけるのは極めて一部の能力と意欲の高い人々であり、その人達は総じて収入も高い。そしてその人達が多くの雇用を生み出しており、今でもこれからも日本の雇用や経済を支えて行くことは間違いない。

今回の制度はそういう人達に「どうぞ海外に行ってください」と言っているのと同じことだと思う。

それによって残される高齢や女性などの雇用や所得は誰が創出するのだろうか?

短期的に税収が得られるからという判断なのであれば、国を経営する人達としてあるまじきこと。

少なくとも国という単位を任されている立場であれば、きちんとした長期戦略に基づいて、筋の通る政策を検討すべきだろう。

その結果として一部の人達が損をしてしまうこともあるかもしれない。
しかしそれはある意味仕方のないことであり、その結果として私自身が損することになったとしても、それは残念だが受け入れられると思う。

しかしただ単にお金のある人達からお金を徴収すれば、税収が増えるというのは、あまりにも安易な発想であり(もちろん様々な議論もあったのだろうが)、到底日本の高収入層が黙って受け入れるものとは思えない。

改めて日本という会社(国)のビジョン、経営戦略、人事戦略、財務戦略、マーケティング戦略を明確にし、その実現、実行に責任を持って取り組んでくれるリーダーシップのある人に首相になってもらいたいものである。

代替案なき批判は評論家である、という持論もあるので、何か代替案がないかなと思い、ちょっと考えてみた。

ちょっと詳細を調べたわけでも何でもないので、単なるアイディアレベルに過ぎないが、生前贈与の相続税と法人税の部分に、もっと工夫すべき余地あるような気がする。

そもそも日本の蓄財の多くが高齢者であり、相続税が高いことによりタンス預金と化してしまっている実状や、主に消費する30代、40代、50代の人達というバランス構造や、給与を払う立場である法人の高止まりした税制など、もっと将来につながる案がありそうな気がする。

もちろん私ごときが思いつくことはとっくに検討済みだとも思うが、何故そういう案が没になってしまったのか、どうして今回のような税制案になってしまったのか、あまりに納得のいかない結果ではないだろうか。


と、年収1500万円以上ではないのであまり損するわけでもない立場ながら、日本の戦略なき目先論に愕然とし、思う事を綴ってしまった。

ちょっと不勉強な部分もあり、間違った理解があればお許しを。