仕事柄、引き続き企業の採用相談を多く頂く。

何とか良い人材を採用したいという各社の強い想いは良く良く理解できる。
弊社としても何とかお手伝いはしたい。

しかし多くの会社はどうやったら採用できるか、という疑問に対してすぐに実践できる表面的なテクニックや即効性のある特効薬みたいなものを求めているケースが多い。我々がその会社を贔屓すれば良い人材が採用できるとか、紹介してもらえるという認識なのかもしれない。

私はどんな企業にも同じ事を申し上げている。

良い人材を中長期的に採用し継続して雇用し、価値を発揮してもらうためには、会社や組織が本当にそれに値する存在にならないといけない。そういう人が選ぶ理由がなければいけないし、そういう人が腰を据えて働く理由がなければいけないし、そういう人がこの会社のために頑張ろうという想いを持てるような組織でなければいけない。

いくら採用の入り口で面接官が上手なトークをしても、すぐに化けの皮が剥がれてしまう。
採用はある意味結婚と同じ。

表面的に繕った上での採用は、ある意味結婚詐欺に近いし、すぐに離婚につながりお互いにとって何らメリットはない。企業は採用コストや雇用手続き、PCやデスクの手配など受け入れコストもバカにならない。個人としては転職歴に傷がつく上に転職活動をしてやっと入社した会社を辞めて、また転職活動をする羽目になってしまう。しかもすぐに辞めるということで忍耐力がないのではないかという目で見られることになりかねない。

多くの企業が口では「弊社は人材が命なんです」と言うものの、本当に良い人材が集まるための努力はそれほどしていないというのが実状で、本気でそう思って、面倒でも時間がかかろうとも経営陣が本気で努力してそういう会社にしていこうと思えば、方法論、戦略論はいろいろとある。

ただほとんどの企業にそういう話をしても、まずは今期の採用、今直近の人材不足を補いたいという話に終始してしまう。

でも振り返ればそういう会社は昨年も、またその前の年も同じ相談に来ていたりする。
3年前からちゃんと取り組んでいたら今頃採用に困ることはなかったかもしれないのに、と思ったりするが、なかなかそれも伝わらない。

改めて思うのは、我々のような人材サービスカンパニーができることは、ちゃんと伝わっていない会社の魅力や特徴を、様々な方法を用いてビジネスパーソンに適確に届けることに他ならない。
当然ながらその会社が持っているもの以外の魅力を伝えることはできない。

とするなら、良い人材を採用するためには、どういうメディアやエージェントを使って、どう伝えるかというテクニックの前に、自社の魅力や特徴、強みや働きがいを徹底的に分析し、そこが弱いようならそこを改善していくことこそが第一であり、それがあって初めてそれをどう伝えるかというテクニック
が活きてくるのだろうと思う。

経営者は良い人材を採用する方法や人事に圧力をかけるばかりではなく、本気で良い人材が集まるような魅力的な組織を創ることに尽力することこそが、将来的には人材面における競争優位性を築くことにつながるということを理解することが何よりも重要だろうと思う。

情報が飛び交う現代では、よりその重要性が増している。

もっとわかりやすく言えば、一昔前の飲食店は宣伝や立地が何よりも重要だった。しかし今は本当に美味しいものを適切な価格と適切なサービスで提供すること、つまり対価に見合った価値を提供するところは、宣伝なんてしなくてもすぐに情報が広まり人気店となる。

より本物が勝ち残っていくという意味では良い時代になったのだと思う。
ビジネスの世界もまさに同じ。

給与やブランドや資本力による宣伝ではなく、本当に良い組織、本当にVisionを持った組織、社員がやりがいを持って頑張っている組織、経営者が心底想いを持っている組織、そういう組織がより勝ち残っていく時代になりつつあるのだと思う。

採用においても、改めて本質を見抜き、根本から見直していくことが重要な時代に突入している。