未上場のベンチャー企業であればどこでもよくあるのは、内定を出した学生が意思決定したものの親御さんが猛烈に反対しているというケース。

自分達は将来有望な成長ベンチャー企業と思っていても、親御さんの立場からすれば名も知れぬ中小零細企業にすぎないわけで、大事に育て一流大学にまで入れた息子・娘の就職先としては心配されるのも至極当然かもしれない。

まさに「どこの馬の骨ともわからない会社」という感覚なのかもしれない(^_^;)


弊社の社員も高学歴な人が多いこともあり、内定承諾時には親御さんの大反対にあったというケースは何度もあった。親御さんの意見を無視して断固入社意志を表明する人もいれば、全力で親御さんを説得してくる人もいる。

しかし私個人としては、社会人としていよいよ自立した大人への一歩を踏み出すタイミングだからこそ、これまで育ててもらった親御さんにはしっかりと理解してもらい応援してもらった方がいいと考えている。かくいう私も就職時にも起業時にも相当に反対された記憶があるのだが(笑)。


ということで、親御さんとちゃんと向き合って話す上で大事にしたほうがいいことを少しだけ記載しようと思う。


多くのケースで折り合わない理由として、親御さんの言う「いい会社」と自分達の「いい会社」の判断ポイントが著しくズレてしまっていることがある。

親御さんの年代からすると、財閥系を中心として知名度の高い大手企業こそが「いい会社」だという意識が強い。つまり規模や知名度、充実した福利厚生、財務体質、想定される生涯賃金といった要素が中心となる。高度経済成長時代、終身雇用が前提の時代を少しでも経験してきた方であれば当然の発想だと思う。

一方で例えば弊社の内定学生達が「いい会社」だと思ってくれているポイントは親御さん達がいいという判断要素とは全く異なり、若くして責任と裁量を獲得できるか、目指していること、取り組んでいることに夢があるか、そこに心から共感できるか、尊敬できる仲間が集まっているか、などが判断要素となっているのだろう。

これでは議論が噛み合うはずもない。

どうしてこういう感覚の差が生まれるのか。


時代背景が異なることが原因の1つだと思っている。


戦後日本は長いこと右肩上がりの経済成長を遂げてきて、その頃にはベンチャー企業と大企業という対比というよりも、中小零細企業と一流大企業という区分けが中心であり、一流大企業に行けない人が中小零細企業に就職し、経済的にも格差があった時代だったのだろう。
また一流大企業を中心に終身雇用が当たり前の時代であるがゆえに、就職した時点でおおよそ自分の生涯賃金が確定したわけで、つまるところどういう生活水準で生きていけるかが決まった時代でもあった。


一方現在の日本はといえば、終身雇用は完全に制度疲労を起こしている。
私の同級生で偏差値の高い大学を出ている友人に限っても、40歳になる今までに転職していない人は半分もいないのではないだろうか。

そもそも資本主義経済の中で企業が生涯雇用を保障することなんてできるわけがなく、経営方針として最大限社員の雇用を生涯守りたいというだけに過ぎない。特に今のように変化激しい時代においては、大企業も合併、部門売却、リストラ、様々な努力をしながら生き延びていかなければならず、社員の雇用を保証するなど言えるはずもない。

さらに会社として存続していたとしても、そこに入社した個々人の雇用を守れるかどうかは別の話しでもある。

例えば家電メーカーは生き残るだろうが、テレビ部門で働く人達はどうなるのだろうか。


ただ上記とは違う考え方として、大企業の方が誰でも社会に価値を生み出す仕組みが出来上がっているということも言えると思う。つまりビジネスにコミットせずとも、有能でがんばりやでなくとも、しっかりと真面目に取り組みさえすれば社会に価値を生み出すことができるわけで、そういう意味では生計を立てるという面では安定感もあるし、誰でも価値発揮できるという安心感もあるのが大企業の強みではある。

ベンチャー企業となると本当に力や想いがない人は価値を生み出すどころか何も形にできずに心が折れてしまうこともなくはない。キャリアや市場価値、経済などに明るい親御さんであれば、こういった面を中心に子供の心配をしているのかもしれない。


いろいろと思うがままに書いたが、究極的には2つの観点があると思う。

年金もないであろう我々以下の若い世代は生涯において10万時間近くを仕事に費やす。
その仕事が、夢や希望ややりがいが感じられず、ただ生計を立てるための労働なのだとしたら、果たして幸せな人生と言えるのだろうか、という考え方。であればどういう仕事に自分の人生の時間を投資すべきか。これは価値観であり生き様の問題。


もう1つはそういった定性的な話ではなく、キャリアや市場価値といった合理的な話。

将来的な市場価値を考えた時に、本当にどういう市場・業界で、どういう働き方をしてきた人が、市場価値が高い人と判断されるのだろうか。既に何十年、何百年と続き、多くのベテランが市場に存在している古き成熟・衰退業界に飛び込んだ若者の未来の市場価値がどの程度かは推して知るべしといったところだろう。

いつの時代も市場で求められるのは、常に人より一歩先を歩み、ノウハウや経験を有する人である。
キャリアという言葉は、馬車がぬかるみを走った後にできる轍が語源になっている。
そこからも何となく感じられるように、キャリアとは頑張って走った後からついてくるものなのだと思う。先んじた経験、ノウハウ、人脈といったその人が成果を出すために必要な要素こそが市場価値を生む。


ちなみに米国は日本に先んじて約50年前に終身雇用が制度崩壊している。
そんな米国におけるトップ大学の1つであるスタンフォード大学の卒業生の人気就職先は以下のような感じ。

1 起業
2 有望スタートアップ企業(アーリーステージベンチャー企業)
3 GoogleやFacebookなどIT系成長企業

これは確か2011年か2012年あたりのデータだったと思うが、現在も本質的には変わらないのではないかと思う。選択できる企業や業界も多く、十二分に考える力を持つエリート達が選ぶ就職先が、なぜこうも日本のエリート大学生とは異なるのか。


とここまで勢いで書いたものの、だからといってIT業界が絶対にいいとか、ベンチャー企業がいいということを言いたいわけでもない。

自分が人生の中で最も大事な時間を投資する以上は、本気で考えた方がいいということであり、親御さんや友人とは意見がぶつかることも時には起こると思う。

その時に自分が本当に何を大事にしたいのか、どんな要素をチェックポイントだと考え、その会社、業界を選んだのか、本当にその道に進むメリット・デメリットを理解しているのか。

それくらいにしっかりと考え抜き、決断することが大事だということ。


その上で最終決断を下すのは親御さんでも友人でもなく、自分自身。
そして学生達はその想いを、しっかりと安心してもらえるように親御さんに全力で説明する責任があると思う。

最後決断したからには、自分が選んだ道を自分で正解にすべく努力をするのみ。

それでも親御さんに安心してもらえないようであれば、東大院卒、東工大卒、大阪大卒、神戸大卒、早大卒、慶大卒といった一流大学卒で今も楽しくイキイキと働いてる先輩達が力を貸してくれるかも♪