アトラエでは出世という概念を一切なくし、肩書は取締役と社員のみというフラットな組織運営に挑戦している。

その理由は一人ひとりの知恵を最大限経営に反映させ、意思決定のスピードを高速化し、チームとしてのパフォーマンスを最大化するため。

自分に置き換えればわかると思うが、組織において本気で成果を出そうと思えば思うほど、社長や意思決定者のできるだけ近くで仕事をするのが望ましいと考えるのではないだろうか。
少なくとも私は前職で組織に属していた時は、何かを変えたい時にはできるだけ最終決済者に直接掛け合ってきた。その方が話が早いし、後から手のひらを返されるリスクも少ないと考えていた。


会社組織で出世することや、評価されることを目指すようなタイプの人ではなく、チームとして本気で成果(=社会に対する価値創造)を出そうと取り組む社員にとっては、組織はフラットであればあるだけ動きやすくなるのではないかと思う。
命令されたことではなく、自分が本当に正しいと思うことを成し遂げることに全力を傾けられる。


How Google Works』というGoogleの経営陣によってGoogleでの働き方や文化などが赤裸々に語られている本にも以下のような記載がなされていた。


こんにち多くの企業が採用している経営管理プロセスは、こうした目的を満たすものではない。いずれも100年以上前の時代の産物だ。失敗のコストが高く、全体的な情報を握っているのは経営トップだけという時代のもので、リスクを抑え、情報量の多いひとにぎりの経営者だけに意思決定を委ねることを主眼としていた。この伝統的な指揮統制を旨とする構造では、組織の末端から経営陣へとデータが上がっていき、意思決定がなされると今度はそれが逆方向に下っていく。この方法は意思決定のスピードをあえて遅くするように設計されており、その狙いを十分に果たしている。つまり、企業が経営のスピードをひたすら高めていかなければならないこの時代に、構造がそれを阻んでいるのだ。

(中略)

まず組織はフラットに保つべきだ。たいていの企業には根本的な矛盾がある。社員はトップとの距離を近くするため、組織はフラットなほうがいい、と言う。だが現実的にはヒエラルキーを望んでいる。だがスマート・クリエイティブは違う。彼らがフラットな組織を望むのは、トップの近くにいたいためではなく、仕事をやり遂げたいためで、それには意思決定者と直接折衝する必要があるためだ。



Googleほど成功している会社の経営陣がこのように書いてくれたことで、アトラエとして長年こだわって取り組んできた組織運営手法がそれなりの意味があるものだったと改めて実感することができた。

また最近では組織運営に定評のある米国企業のザッポスという会社でも、会社組織の一部で役職や肩書を完全に廃した組織運営を実験的に行っているという。
こういう考え方をホラクラシーと言い、ヒエラルキーでなく社員が自律的に運営するのが特徴だと言われている。

何にせよ、少しづつながら次世代型の組織のあり方が模索され始めていることを感じる。


勿論、チームごとに一定の意思決定を実行していく必要性はあるため、基本的にチームを形成し、それをプロジェクトと考え、各チームにはプロジェクトリーダーを任命するようにしている。この場合のプロジェクトリーダーはあくまでも役割の話であり、決してそのプロジェクトの中で最も偉い人でも、最も給与が高い人でもない。

実際に新卒1年目にリーダーを任せているプロジェクトもある。


勿論評価はフラットではなく実力主義で決まっていく。
これは各社員の組織の成長、目標実現に対する貢献度によって取締役が中心となって決めている。
弊社のいまくらいの人数であれば、この方法が最も公平性を担保できると思う。
今後組織を大きくしていく上で、どう仕組化したり、制度化していくかは、検討が必要かもしれないが。。。


フラットな組織を運営していく上で大事なポイントが2つある。

1つは全社員の情報レベルを限りなく経営トップと同じレベルまで引き上がる努力をすること。
つまり全員が経営トップと近しい情報を持てさえすれば、多くのことは自分で考え、自分で判断して、動くことができるし、合議制で何かを決める上でも話が早い。

しかし各社員が現場における自分の視点、つまり開発者であれば開発の視点、マーケティング担当であればマーケティングの視点からしか物事を考えなくなってしまうと、フラットな組織は成り立たない。全社員が経営トップと近しい情報を持ち、経営的視点に基づき、自発的に考え行動することこそが、フラットな組織がパフォーマンスするための必須条件である。

組織が大きくなっても、多くの社員がしっかりと経営トップと近しい情報を持てるようにあらゆる努力をし、多くの社員が経営視点に基いて考え行動できるよう促したり、教育していくことで、フラットな組織は拡大にも耐えうるだろうと考えている。


そしてもう1つは、文化やカルチャーの醸成である。
自らの考えを主張する責任権利を全ての社員が持っているという自覚を全員が持たなければ成り立たない。誰でも正しいと思うことをしっかりと主張し合う文化、誰が言ったかではなく何を言ったかのみが重視される風土、そういう価値観を組織として徹底し続けていなければ成り立たない。普通の組織で働いてきた人達は、どうしても先輩や経営トップの意向を汲み取ろうとしてしまいがちになる。それが普通の組織で生きていきた人達の常識なのだから仕方ない。

だからこそアトラエでは新卒で入社してきた社員が70%を占める。
ベンチャー企業としては恐らく日本で最も新卒比率が高い組織なのではないかと思う。

既存の慣習に影響を受けず、実際に自分達が正しいと思えることを追求し続けられるのが、新卒ならではの強みだろう。


せっかく仲間と何かを目指して頑張ろうと思っているのだから、社内における出世や肩書を目指すのではなく、如何に社会に対して提供する価値を最大化できるか、にコミットして全員が一致団結して本気で動く、そんな働き方こそが理想なのだと思う。


新卒採用や中途採用においても、なぜアトラエがフラットな組織にこだわっているのか、という質問を頻繁に受けてきたが、このブログによってその理由が少しでも伝われば嬉しい限り。