売上をもっとあげたい、経営者なら誰もがそう思っているだろう。
かくいう私も勿論今の売上に満足しているわけもないのだが。

その一方で組織のリーダーとして「売上を上げろ」という指示を出すのは、私の感覚からすると明らかに組織をダメにするミスリードの典型だと思っている。

売上を上げる、利益を増やす、みたいなことを事業運営・組織運営の目標とすると、事業やサービスを通して顧客に価値を提供するという最も大事なマインドが次第に薄れていくものである。

売上を上げるためには顧客に提供する付加価値を高めるか、もっとも多くの顧客に価値を届けるか、ということでしかないわけで、リーダーとしてはそういうメッセージを出すことによって、顧客に価値のない売上なんてありえない、今よりももっと顧客に価値を届けることに力を尽くせというニュアンスが組織全体に伝わり、風土やカルチャーを醸成することにつながる。


多くの組織で目標とされがちな売上や利益だが、その数値の持つ本質的な意味や、その数値を実現するためのプロセスへの拘り、何故それだけの数値を目標にしているのか、それらのストーリーを関わるメンバーにしっかりと理解、腹落ちさせられているかどうかこそが、リーダーとしての重要な役割だろうと思う。

誰も売上を上げたくないなんて社員はいない。
でも一方で売上をあげるために働きたいと思う社員なんていない。

日本経済が右肩上がりで成長しなくなった現在においては、単に経済的な条件だけで優秀な人を惹き付けることはできなくなっている。人材の流動化が高まり、より知識産業化が進む世の中において、組織は今まで以上に人を採用し、育成し、定着化させることに力を費やす必要がある。人や組織こそが、競争の源泉であり、唯一無二の武器となりうるのだと考える。

そんな時代においては、従来のピラミッド形の出世を前提とした組織体系にそれほど大きな価値も意味もなく、年功序列に至ってはもはや弊害しか生まない。老若男女、あらゆる人の知恵を活かし最大化できる組織こそが競争優位に立つ時代。

まさに組織理論は次の世代に突入せざるを得ない状況を迎えていることをひしひしと感じる今日この頃である。