世界的株価低迷、米中貿易摩擦、ブレグジットなど、2019年のスタートは決して順風満帆とは言えない様相を呈している。

我々のような小規模なベンチャー企業にとっては、マクロ経済の動向よりも、自助努力の方が影響が大きく、市場全体が低迷していても努力と工夫次第で業績は伸ばしていくことができるので、さほど気にしすぎることなく、価値があることに邁進していくべきだと考えている。

そんな中で最近個人事業主やフリーランス、プチ起業のような働き方を選択する20代、30代が増えてきているのを肌で感じる。その多くは自由度の高さと、一時的な収入の向上であろう。

社会人になって以来、多くの人の転職やキャリアに関わることを生業にしてきた私としては、少しもったいないと感じることが多い。

フリーランスや個人事業主というのは、自身のスキルや経験や労働力や時間といった、既に持っているリソースを切り売りすることで対価を得ることがメインとなる。そしてそのリソースに対して常にニーズが高いクライアントに対して価値を提供することで、当然ながら常に自分のスキルや経験を必要なところに提供する以上、短期的に見れば一つの会社で働く正社員よりも収入を高めることができるケースが多い。

一方で20代、30代というのは体力、知力、そしてプライベートの環境的にも、ビジネスパーソンとしてもっとも成長できうる期間でもある。そういうときにいかに多くの修羅場をくぐり、多くの挑戦と失敗を繰り返せるかが、40代以降のビジネスパーソンとしてのバリューに大きな影響を与える。

多くのビジネスパーソンの生き様や選択を見てきた私なりの見解として、若く成長余地がある間に、短期間での対価最大化、つまり収入の最大化に走るのは決して合理的な選択だとは思えない。逆にいえば、成長余力が衰え始め、身につけてきたバリューの価値がマックスに到達するかどうかという40代後半以降くらいであれば、自身のスキルや経験を切り売りして提供することで、社会に貢献したり、対価を最大化するという選択も合理性を増すだろう。


なんとなくイメージがつきづらいかもしれないが、ヨーロッパの一流リーグで活躍するサッカー選手が、もっとも成長できる20代のうちに年俸が高いという理由でJリーグにくるかと言われれば、まずこないだろう。一方で体力や技術の成長に衰えを感じた最後の数年であれば、条件次第では自身がもっとも活躍できる場、つまりヨーロッパに比べてまだレベルが至らない日本のリーグなどで自身の経験やスキルを提供し、短期的に最大対価を得るというのは理に適っているといえる。

多様な働き方が選べる世の中は素晴らしいし、人材の流動化も極めて重要かつ必要なことだと思っている。その一方で伸び盛りの若い人達の安易な短期的な対価最大化を目的としたフリーランスや個人事業主の増殖には警笛を鳴らしたい。

5年や10年を生き延びれればいいのであればそれもいいかもしれないが、これからの人達の社会人人生は50年と言われる時代である。若い時は10年、20年というスパンでなんてものは考えられないことも重々理解した上で、短期的に売れる歌を歌おうとするアーティストではなく、自分が本当に価値があると思える歌に人生を賭け、歌い続けるアーティストを目指してもらいたい。

社会人になって20年以上が経過した今だからこそ、いろいろと見えるものがある。
少しでも若い人達の意思決定の役に立てばと思い、新年最初の筆をとってみた次第。

2019年もよろしくお願いします!