猛暑とコロナにより、いよいよリモートワークがより効率的に感じてしまう今日この頃。

経営者仲間の間でも、オフィスの一部解約をコロナ初期に決断・実行した話や、今後段階的にフリーアドレス化をして、リモートワークを推奨することでオフィス利用は50%まで削減していくことで利益率を高めていくなどの話題が事欠かない。

ここから先は組織創りやカルチャー醸成に重きをおいてきた私なりの経験に基づく見解だが、変化に適応し成長し続ける強い組織ほど、オフラインでのコミュニケーションやオフィスにおける環境や空気感を重視しているように感じる。

弊社ではコロナよりも前からリモートワークも自由、出退勤時間も自由と、極めて社員の自主性を重んじた組織運営をしてきており、コロナによりオフィスで働く社員の割合が変わった程度で、それ以外は特にルールを変更する必要もなく今に至っている。

実際にリモートワークは、集中して何か作業することや、会議も短時間で集中して実施しやすかったり、営業活動においても移動を伴わないために極めて効率的に実行できるなど、様々なメリットを感じるのは事実である。経営者にとっては何よりもオフィスコストが削減できるとなれば最高であろう。固定費をあまり抱えないIT企業にとっては、オフィスコストは人件費の次に大きなコストとなっているケースが多く、ここを削減できるということは利益率を向上させられるということに直結する。

しかし私はここに危機感を覚える。

私は17年間今の会社を経営してきて、また多くの企業経営を間近でみてきた中で、オフィスにおける偶発的なコミュニケーションから生まれるイノベーションやコラボレーション、さらには人材育成やエンゲージメント向上、価値観の浸透、カルチャーの醸成というものに多大なる価値を感じている。

企業経営を論理と合理で考えすぎることによって、一時的には利益率が向上し、業務効率が高まるかもしれないが、5年10年というスパンで企業の成長や進化を考えたときには、やはりオフラインでのコミュニケーションを重要視すべきではないかと思う。

もちろんオンラインでもオフラインのような仮想空間を構築し、コミュニケーションツールを駆使することで補えるという可能性も否定はしないし、そこへの挑戦や努力はすべきだと思う一方で、多くの会社が業務効率とコスト削減という短期的な視点によるオフィス解約、オフィス削減へと踏み込んでいるように見える。

オフィスで同じ志をもつ仲間と顔を合わせ、切磋琢磨しながら何かを生み出すべく必死に仕事に取り組む、そんな熱狂する組織こそが、この先の読めない変化の時代を生き抜く強い組織なのだと感じる。インターネット企業の経営者の割には随分とアナログで古臭い考え方のように感じられてしまうかもしれないが、人間の本質は今も昔も大きくは変わらない。

「仕事をする」「職務をこなす」のではなく「何かを成そうとする」ためには、やはり一筋縄ではいかないことが多い。本気で実現するためには、強いポリシーを持ち、長期視点で組織を運営していく必要があるのではないか。

社員をオフィスに出社させるのではなく、どこでもいつでも自由に働ける状況においても、常にオフィスに自分の居場所が存在し、信頼できる仲間が存在し、ついオフィスに行きたくなる、オフィスの方が仕事がはかどる、そんなオフィスづくり、組織づくりにこだわり続けたい。