仕事柄、経営者や人事の方から人事評価制度について聞かれることが多い。

そういうときの代表的なやりとり。


「御社では人事評価制度ってどういうものを使っているんですか?」

「いや、今は制度は特に何もなくて、私ともう1名の役員で決めてます」

「え?そんなんで社員から不満出ないんですか?」

「今のところは・・・」


そう、現状は弊社では人事評価制度が存在していない。
というのも20人程度しかいないということが前提にある。

さらに私ともう1名の役員が毎日フルに現場を見ていることもあり、全社員何を担ってくれていて、どういう仕事ぶりなのか、おおよそわかっているということもある。

こういうときは変に制度に依存するよりも、フリーハンドで評価する方が会社として評価すべき人を評価することが出来る。そこには恣意性が入らないのかどうかという質問も良く頂くが、実は恣意性は入ってしまう。

しかし20人程度のアーリーステージの会社において、経営陣の恣意性を排除した人事評価制度なんて存在しないし、そんなものはワークしないと考える。


では評価制度はいらないのか。

そうではない。評価制度は実は極めて重要なもの。
あくまでも企業のフェーズによるというだけのこと。

経営陣が全社員の仕事ぶりや職務を把握しきれなくなったら、もう少し正確に言うと、社員が「経営陣は自分の仕事ぷりをわかってくれていない」と思うようになったら、評価制度が必要となる。

つまり評価制度は経営陣と社員間の評価における信頼関係の距離感に応じて必要になってくる。

100%に近い信頼関係や現状共有がされているときは、ほとんど必要ない。
経営者としてどういう人が会社にとって重要な人で評価をする人かというメッセージだけを明確にしておけばそれでいい。

しかし50%しか信頼関係や現状共有がされていないときは、もう50%を制度で補完
する必要が出てくる。

というと次の質問は、それでは50%を補完する評価制度はどういうものがいいのか、ということになるのだろう。

しかしこれは実は答えはない。というか経営陣や会社の目指す組織像や事業構造、採用している社員の価値観や志向によってベストが異なる。だから難しい。

よくある失敗例として、大企業で人事制度構築を経験してきたベテラン人事が、ベンチャー企業に鳴り物入りで就任し、すぐに自分の経験してきた制度を導入しようとして会社を人事から崩壊させてしまうことがある。

これ実はめちゃくちゃ多い。
知ってる制度をあてはめるなんていうのは最悪。
ベーシックなパターンはいろいろとあるので参考にすればいいが、基本的にはちゃんと経営陣と価値観を共有できていて、自社や社員について理解のある人がオリジナルで考えるべきだと思う。

そして大事なのは制度の出来の良さ悪さよりも、徹底した運営を実行すること。
それが実は結構難しいのだが・・・。


ちなみに私が将来的に自社にとってベストだと思っている評価制度は、完全なるオリジナル評価制度で、カンパニーごとなどがパフォーマンスによって給与分配金を受け取り、それをチームごとのルールや360度評価などによって分配されるような制度。

ある程度の組織規模になってくると、私の納得感や恣意よりも、社員同士の納得感ややったらやった分だけ跳ね返ってくるという実感が大事。

そして年齢に関係なく、実力主義で決まっていく制度であり続けたい。

そのためには年を重ねれば重ねるほど、若い人以上に知恵を絞り、頑張らないと、少なくとも体力や気合いでは勝ち目が薄くなるのだから(笑)。

今は35〜40人を越えそうなタイミングで簡易な人事評価制度の導入を考えている。そのときになったらまた共有させてもらいます。