弊社でもいよいよ2015年4月入社予定の新卒採用活動が少しづつ熱気を帯びてきている。

この時期から学生が就職活動をスタートすること自体が良いのか悪いのか、また全学生が卒業と同時に一斉に新卒入社する日本独特のリクルートスタイルについても賛否あるのではないかと思う。リクルートが担ってきた日本式就職活動スタイルの確立においては功罪あろうと感じる。

それについては置いておき、私自身直接学生と話しをすることが多いが、毎年毎年感じるのはまだ気付かないのか、そろそろ気付いてもいいんじゃないかという気持ち。


業界には成長途上にある業界と、成熟から衰退期に入りつつある業界が存在する。
勿論一概に全ての業界がそのライフサイクルにあてはまるわけではないものの、事業会社が戦う市場の多くは、一定ライフサイクル理論に則っているように思う。

そのときに、成長業界と成熟業界のどちらに若く有能な人材の未来が、機会が存在するのだろうか。
スポーツ選手で言えば、若いうちから実力や意欲次第で試合に沢山出れるチームと、一定の修行期間を経過しない限りどれだけ実力があっても意欲があっても試合には出してもらえないチームであれば、どちらが成長できるかは明白。


日本のここ数年の就職人気ランキングを見ると正直心からがっかりする。
ほとんど上位は成熟業界ばかりで、下手したら衰退業界さえも入っている。
逆に言えば成長業界はほんの一握りしかランキングされない。

東大や早大、慶大といった偏差値としては一流レベルの学生さえも、世の中や市場の本質を見抜けない。もしくは見抜いていても不安で大多数と同じ選択しか取れないのでは、日本は終わりだろう。

この原因は何か。

間違いなく終身雇用という制度にある。
終身雇用が良い悪いでいえば、良いところも沢山あるし、私自身も自分は社員を終身雇用したいという価値観を持つ経営者でもある。
一方で終身雇用だったが故に、就職活動において内定をもらったその時点で人生の生涯賃金や社会における「格」のようなものが決まってしまうという時代が長く続いた。確かにその時代であれば最も生涯賃金が高く、仕事が比較的楽しそうな会社を選ぼうと思うのも仕方ない。すなわち大学における偏差値が、企業における生涯賃金みたいな位置づけとなり、たった一つの軸による会社の序列が出来上がってしまっていたように思う。

その結果として日本の大卒のホワイトカラー市場だけが、適切な市場原理が働かなかったのだろう。

一方、昨今は日本においても終身雇用が崩壊していること、今後維持することは不可能であることは今更説明するまでもないはず。
つまり終身雇用でないということは、今まで市場原理を逸脱していたホワイトカラー市場も市場原理に晒される時代に突入してきているということに他ならない。

事実、ずっと市場原理に晒されてきた米国における大学生や大学院生の人気就職先は時代ごとに変化し続けている。その中心にあるのは成長業界であり、それは自らにとって豊富な成長機会を得ることや、時代の最先端の業界に飛び込むことで自らに特有のスキルや経験、人脈を身につけようという意志の現れであり、まさに変化の激しい市場原理の中で生き抜くために考え抜いた選択なのだろうと思う。


これからの日本は終身雇用からの脱却が求められる。

山一証券の倒産から始まり、都銀の相次ぐ合併、大手メーカーの時価総額の低迷と赤字化やリストラなどは序章に過ぎないのではないか。更にそこに乗り込んで来るグロバリゼーションの波。事実インターネット業界や金融業界のみならずメーカーもグローバル企業との熾烈な競争が展開されている。

そんな時代の中で会社組織という箱に依存することで安定が得られるわけはない。
安定した組織を築く経営手段はゼロではないかもしれないが、安定した個人になるためには、何よりも市場原理の中で必要とされる人材に自らがなっていく以外に道はない。

市場原理の中で必要とされる力や経験を身につけるにはどういう業界に飛び込むべきなのか。
そこから先は是非とも学生自ら真剣に考えてみてもらいたい。
わかっていても周囲の多くの人が選ぶ道と違う道を選ぶ不安感やリスク感を感じてしまい、尻込みしてしまう学生もいると思う。これは日本特有の村社会に根付く感覚なのかもしれない。
本来ユニークであればあるほど市場価値は高いはずなのに、人と同じことを良しとする傾向が拭えないまま現代に至っているように思う。

私自身も最近海外への出張や視察を意図的に増やしているが、どの国に行っても思うことがある。
それは、日本人は十分に世界でも戦える素養や文化を有しているということ。
ただしそのためには気持ちや考え方を少しだけ変えないといけない。

我々大人がもっともっと本質を見抜いてアドバイスしてあげる必要がある。

大企業のサラリーマンとして高度経済成長を経験し充実した人生を歩み、ここまでの日本を牽引してきた大人達が、これから市場原理に晒される時代を生き抜く若者に対して、過去の経験談やポジショントークしか伝えていけないようではいけないのではないか。時代は明らかに変わっている。時代の変化を見極めた適切なアドバイスができない、という今のような状況のままでは日本は沈んでいってしまう。

教育を変えるべきだという人も多い。私も長期的には国力を上げるためにも大事だと思う。
但し短期的に見れば、親、先輩、教師といった若者にアドバイスをする立場の人達がもっと今の時代を理解し、適切なアドバイスをしていくことが大事なのではないだろうか。