世の中にはいろんな経営スタイル、経営手法があるとつくづく思う。

目一杯レバレッジを効かせてハイリスクハイリターンを目論む経営者もいれば、無借金経営で自分達のフリーキャッシュフローの中で安全性を確保しながら地道な成長を志す経営者もいる。

経営者として別にどちらが正解・不正解ということはないと考えている。
ただ自分や役員・社員以外の第三者の株主から出資を受けた時点で、ある一定の成長を実現しなければいけないのが経営者の責務ではある。


私自身、2003年に創業してからリーマンショックが起こった2008年末くらいまでは、赤字でも売上やKPIを伸ばしていければ問題ないと考えて、早く成長することばかりを意識した危うい経営を展開していた。何かあれば第三者割当増資をすればいいくらいの気持ちでリスクを取るべき、みたいな発想だったように思う。

今でも笑えない話しだが、リーマンショックによって売上が前年対比で約半分近くに落ち込み、当然ながら我々以上に銀行やベンチャーキャピタルといった金融機関の環境も悪化の一途をたどる。つまるところ、我々が急いで増資して生き延びようとしても、その時にはもうどこも助けてくれるような状況にはなかったのである。

その当時のことを書き始めると長くなるので、この程度にとどめておくが、リーマンショックを乗り越えるためにあらゆる努力・工夫をした。それに伴いそれなりの数の社員が辞めていった。
全て経営者としての自分の未熟性が生んだ結果にすぎない。

そんな経験から学んだことは、経営者としてやはりリスクサイドのコントロールは絶対条件であるということ。そして調子に乗ることなく、一定の信念と判断軸をもって、地に足のついた経営をしていく必要があるということ。

当時は自分のことをリスクテイカーだと自画自賛していたような節があるが、今思えばただの無知で無謀なリーダーという側面の方が大きかったように思う。
恐らく多くの方にもいろいろ経営相談してはいたものの、赤字でも上場できる、まずは売上を伸ばすべき、資金はいくらでも調達可能、など、当時の自分達にとって都合の良いアドバイスだけが耳に入ってしまっていたのかもしれない。


そんな反省もあり、2010年以降はあらゆる面を見直し、黒字経営を意識して継続してきた。
固定費の増加を最小化し、テクノロジーを駆使することにより、ダウンサイドのコントロールを徹底することと、市況の変化に対するアンテナを強く意識すること。それによって生まれる余裕の範囲内での投資をしてきた。

しかし我々は中小企業ではなくベンチャー企業である。
一定のリスク・コントロールをしながらも、チャレンジしていかなければ社員達にとっても面白くもなければ、株主の期待にも応えられない。
この数年間は土台作り、自力を高めることに専念しつつも、勝負のタイミングを今か今かと待ち続けてきた。


そしてこの10月より始まった2015年9月期こそがその勝負のときだと判断した。
まさにここからがアトラエにとってチャレンジ期間。だからこそこのタイミングで社名も変え、オフィスも移転し、新たな事業も準備し、本格的に勝負を仕掛け始める。

もちろん今活躍するスタートアップと比べるとスピード感でも注目度でも見劣りしているかもしれない。
しかし長期的に伸び続ける企業、運や偶然性に依存することなく、どんな壁にぶつかろうとも自力で何度でも成長軌道に乗せなおすことができる組織を創りあげる上で、十分な土台ができつつあるという自負もなくはない。

もはや誰からもちやほやされない中年起業家と優良中小企業ではあるが、今期取り組む挑戦を成功させることができれば、今まで以上に市場に大きな価値を提供することができ、結果として飛躍的な成長を実現することができるはず。

ワクワクしつつも、脇を締めて、実直に取り組んでいきたい。
アトラエとして初めて迎えた期が飛躍のスタートとなるように。