先日、とある起業家の先輩とご一緒したときにふと言っていた一言。

「いよいよ俺達が過去に経験してきたノウハウが通じなくなってきている気がするね。」


本当にその通りだと思う。

テクノロジーの進化によって、人々の生活や働き方などが大きく変化し、それに伴い企業の活動のあり方やサービスや事業の価値の生み出し方がとんでもないスピードで変化していっている。

経営者として常に一線に立ち、高い情報感度を保ちながら、事業や組織をリードしていける人はカリスマと呼ばれるような人達なのかもしれないが、多くの一般的経営者(?)にはそんな芸当はなかなかできるものではない。

特にサービス開発、事業開発という側面では、大きな判断は可能でも、細部の作りこみや機能の企画などは、自分達が現場で様々な経験をしてきた時代とは異なることもあり、ヘタすると老害にさえなりかねないことを自覚する必要があると思っている。

一方で組織作りという側面では、豊富な経験や知識は十二分に役に立つ。
逆にここばかりは経験がないといろんな壁にぶつからざるを得ず、かなりの遠回りを余儀なくされがちだろう。

つまるところ、会社経営において組織や風土を創っていく役割と、事業やサービスを創っていく役割の両輪がある上で、前者は経営者として継続的に価値発揮できるし、経営者しかできない仕事だと思う反面、後者は自分よりも優秀で能力が高く、時代の最先端の感性やリテラシーを持つ人達に権限委譲していく方が圧倒的に成功確度が高まるのではないだろうか?!

いつの時代でも経営者が現場で指揮をとって立て直す、みたいな話はあるわけだし、私も時にそういう動きをするものの、実際にやるべきなのは(やれるのは)方針決めだったり、チームビルディングだっったりがメインで、サービスや事業についてはおおよその収益モデルのイメージや市場ターゲットなどには関わるものの、画面イメージや機能など細部についてはほとんどタッチしないようにしている。意見を言う場合もあくまでも1メンバーとしてフラットに言うのみ。

正直自分の感覚なんて古いに決まってるので、みんなの総合的な意見や、強い意志を持った担当者の意見を重視すべきだと考えて、そう行動するように徹底している。

40歳を超えて自分のリテラシーや感性の衰えと、テクノロジーの進化のスピードを認識した時点で、少しずつ事業やサービスへの関わり方を変えてきたわけだが、それが最近すこぶる良い感じでパフォーマンスに現れてきたように思う。

事業と組織、その両輪を最も得意な人達が担うことで、会社という車はより速く走れるということなのだろう。こういうノウハウってなかなか本読むだけじゃあ身につかないから難しいよね。

いつの時代もベンチャー企業で、ちょっとした壁にぶつかった途端に組織崩壊したり、踊り場になった途端にどんどん人が抜けちゃうような組織が沢山存在するが、そういう組織の特徴として経営者が事業開発、サービス開発に躍起になりすぎることによって、両輪のバランスが取れなくなってしまうケースが多い印象。

長期的に考えれば、両輪のバランスこそが経営の肝なのだと改めて思う次第。